1959年:分断と成長の狭間で揺れる日本
1959年は、日本が高度経済成長期に入った激動の年でした。この年、日本では日米安保条約改定を巡る安保闘争が大きな社会的動揺を引き起こしました。学生運動が活発化し、安保反対のデモが全国各地で展開されました。これにより、戦後民主主義のあり方が深く問われ、社会の分断が進んでいきました。また、伊勢湾台風による甚大な被害は、高度経済成長の影に潜む脆弱性を露呈させ、防災意識の向上を促しました。
一方で、1959年の国際情勢も大きな変動を見せました。キューバ革命がアメリカとの対立を深め、中南米に新たな革命の波をもたらしました。同時に、チベットでの蜂起が中国と西側諸国との対立を激化させ、国際社会に衝撃を与えました。また、アフリカでは民族解放運動が加速し、ベルギー領コンゴの独立を皮切りに、多くの国が独立を果たしました。これらの国際的な出来事は、日本を含む世界各国に広範な影響を及ぼしました。
国内では、日本経済が急速に発展し、都市化が進みました。家電製品の普及により、生活は便利になり、新しい文化が生まれましたが、一方で、都市問題や環境問題といった新たな課題も顕在化しました。これにより、急速な経済成長に伴う社会的変化が浮き彫りになり、人々の生活スタイルに深い影響を与えました。
さらに、1959年は若者文化が大いに花開いた年でもありました。ロックンロールやツイストダンスが流行し、若者たちは新しい音楽やファッションを楽しむようになりました。テレビやラジオの普及によって、大衆文化が急速に発展し、歌謡曲やドラマが人々の生活に深く根付きました。また、芸術界でも前衛芸術や現代美術が注目され、新たな表現の流れが生まれました。
このように、1959年は日本と世界が共に大きな変革を迎えた年であり、社会、経済、文化の各側面で顕著な変化が見られました。国内外の出来事が相互に影響を及ぼし、その後の時代に大きな影響を与えることとなったこの年は、日本の近代史において重要な意味を持っています。
1959年の昭和歌謡:歌謡曲の多様化と新たな試み
1959年の日本の音楽界は、非常に活気に満ちた年でした。この年、日本の音楽シーンで特に注目されたのは、ペギー葉山の『南国土佐を後にして』は、当時の南国への憧れや日本のポップスの新しい方向性を象徴する曲として、多くの支持を集めました。また、12月27日には、文京公会堂で第1回日本レコード大賞が開催され、音楽界の一大イベントとなりました。この年の大賞は水原弘の「黒い花びら」に贈られ、そのヒット曲は音楽シーンを大いに賑わせました。
さらに、クラシック音楽の分野でも重要な出来事がありました。小澤征爾が第9回ブザンソン国際指揮者コンクールに日本人として初めて出場し、見事に優勝しました。この快挙は、日本のクラシック音楽界に新たな風を吹き込み、国際的な評価を高める契機となりました。
また、音楽のトレンドや人気曲も多彩でした。井上ひろしの「地下鉄は今日も終電車」や、大津美子の「空へ帰る人」、春日八郎の「足摺岬」などがヒットし、リスナーに広く愛されました。スリー・キャッツの「黄色いさくらんぼ」や、ザ・ピーナッツの「可愛い花」、島倉千代子の「哀愁のからまつ林」など、さまざまなジャンルの楽曲がランクインし、邦楽の多様性を象徴しました。
1959年には、NHK紅白歌合戦も大きな注目を集めました。12月31日に東京宝塚劇場で開催された第10回紅白歌合戦では、紅組のトップバッターに荒井恵子が、白組には曾根史郎が登場し、華やかなステージが繰り広げられました。トリには美空ひばりと春日八郎が登場し、見事なパフォーマンスを披露しました。出場歌手の中には、ザ・ピーナッツや和田弘とマヒナ・スターズなども初出場し、その後の音楽シーンに多大な影響を与えました。
このように、1959年の日本の音楽界は、多くの注目すべき出来事と共に、音楽のジャンルやスタイルが豊かに広がりを見せた年でした。
1959年(昭和34年)の名曲、発売リスト
以下に、1959年の代表的な演歌・歌謡曲をいくつか紹介します。
- 井上ひろし「地下鉄は今日も終電車」
- 大津美子「空へ帰る人」
- 春日八郎「足摺岬」「あれから十年たったかなァ」「山の吊橋」
- 小林旭「ギターを持った渡り鳥」「銀座旋風児」
- こまどり姉妹「浅草姉妹」「三味線姉妹」
- 島倉千代子「哀愁のからまつ林」
- スリー・キャッツ「黄色いさくらんぼ」
- 中島そのみ「フラ・フープ・ソング」
- ザ・ピーナッツ「可愛い花」「情熱の花」「心の窓にともし灯を」
- 平尾昌章「ロック「おてもやん」」「浮かれ祭り」
- フランク永井「夜霧に消えたチャコ」
- フランク永井と松尾和子「東京ナイト・クラブ」
- ペギー葉山「南国土佐を後にして」「爪」
- 松尾和子、和田弘とマヒナスターズ「誰よりも君を愛す」
- 松山恵子「お別れ公衆電話」
- 水原弘「黒い花びら」
- 美空ひばり「大川ながし」
- 三波春夫「大利根無情」「忠太郎月夜」「鴛鴦道中」「沓掛時次郎」
- 三橋美智也「古城」
- 村田英雄「人生劇場」
- 守屋浩「僕は泣いちっち」
- 守屋浩・堀威夫とスウィング・ウエスト「檻の中の野郎たち」
- 和田弘とマヒナスターズ「夜霧の空の終着港」「泣けるうちゃいいさ」
コメント