1962年(昭和37年)の演歌・歌謡曲

1962年:高度経済成長と若者文化が花開いた年

高度経済成長の波が日本を席巻した1962年は、社会の様相を大きく変えるとともに、若者文化が花開いた年でもありました。東京オリンピック開催を控え、国民の期待感は高まり、一方で世界はキューバ危機やベトナム戦争といった国際的な緊張に揺れていました。

日本国内では、東京オリンピックに向けてインフラ整備が進み、都市化が加速しました。また、テレビ放送の普及が急速に進み、1962年にはカラーテレビが一般家庭にも広まり、映像メディアが人々の日常生活に欠かせないものとなりました。

文化面では、1962年は日本の音楽と映画においても大きな変革が見られました。音楽界では、グループサウンズのブームが到来し、ザ・ビートルズの影響を受けたザ・スパイダースやザ・ハイローズといったバンドが登場しました。また、アイドルブームの先駆けとして、橋幸夫と吉永小百合が共演した「いつでも夢を」が大ヒットし、多くのファンを魅了しました。

映画界では、黒澤明監督の『椿三十郎』が公開され、その新しい作風とストーリーテリングが国際的な評価を高めました。また、アメリカ映画『アラビアのロレンス』や『007 ドクター・ノオ』が日本で公開され、世界的な映画の潮流が日本にも影響を与えました。

国際的には、キューバ危機が終結し、核戦争の危機から回避されましたが、ベトナム戦争は依然として激化し続けました。また、アメリカとソ連の宇宙開発競争はさらに加速し、人類初の宇宙遊泳が成功しました。

このように、1962年は日本と世界の両方で多くの重要な出来事が起こり、経済成長、社会の変革、文化の進展など、多くの分野で歴史的な一年となったのです。

1962年の昭和歌謡:名曲たちが輝いた変革の年

1962年の昭和歌謡は、多様化する音楽シーンの中で、新しい試みが次々と生まれた年でした。この年、日本の音楽界は重要な転換点を迎え、多くの名曲が誕生しました。音楽が進化する中で、アーティストたちの革新と魅力が一層際立った年でした。

邦楽シングルのリリースが豊富だった1962年、その年の楽曲たちはそれぞれ異なる魅力を持ち、多くのリスナーに愛されました。アイ・ジョージの「哀愁のトランペット」は、彼の独特な歌声とメロディーが心に残り、聴く人々を魅了しました。この曲がリリースされた背景には、彼の音楽的な冒険心と、新しいスタイルを追求する姿勢がありました。

一方、石原裕次郎の「赤いハンカチ」は、彼の映画との連動で大ヒットしました。曲の背後には、石原裕次郎が持つカリスマ性と、その時代を代表する映画の影響が色濃く反映されています。この曲は、日本の音楽と映画が融合する象徴的な例として、多くのファンに愛されました。

伊東ゆかりの「ロコモーション」は、軽快なリズムとキャッチーなメロディーが特徴で、彼女のポップな魅力が光る作品です。楽曲は、当時のポップカルチャーを象徴し、聴く人々を元気づける力を持っていました。また、植木等の「無責任一代男」や「ハイそれまでョ」などの楽曲は、ユーモアと皮肉を交えた歌詞で時代の風刺を効かせつつも、楽しい聴きごたえを提供しました。これらの曲は、社会の風刺を交えながらも、聴く人々を笑顔にする力を持っていました。

1962年の音楽賞では、橋幸夫と吉永小百合の「いつでも夢を」が第4回日本レコード大賞の大賞を受賞しました。彼らのデュエットは、その年の音楽界での輝かしい瞬間を象徴し、多くの人々の心に残りました。この受賞には、音楽界での革新と共に、新しい才能の誕生も含まれていました。

新人賞では、北島三郎の「なみだ船」と倍賞千恵子の「下町の太陽」が選ばれました。これにより、新しい才能の登場が示され、昭和歌謡の未来に希望を感じさせる瞬間でした。特に注目されたのは、三橋美智也の「星屑の町」が歌唱賞を受賞した点です。彼の深みのある歌声は、リスナーの心に強く残り、その魅力は今も色あせることなく続いています。作曲賞には中村八大の「遠くへ行きたい」、編曲賞には佐伯亮の「恋の曼珠沙華」が選ばれ、それぞれの才能が高く評価されました。

同年の第13回NHK紅白歌合戦は東京宝塚劇場で開催され、放送時間が21時から23時45分に変更されるなど、より長時間の放送が行われました。紅組司会には森光子、白組司会には宮田輝が担当し、総合司会には石井鐘三郎が務めました。初出場の仲宗根美樹や中尾ミエ、再出場の松島アキラや松尾和子など、多彩なラインナップが揃い、視聴者を楽しませました。特に、美空ひばりの「ひばりの佐渡情話」や橋幸夫と吉永小百合の「いつでも夢を」は、大きな反響を呼び、視聴者に強い印象を残しました。

1962年は昭和歌謡の歴史において、アーティストたちが多様な音楽スタイルを追求し、新たな名曲が次々と生まれた年でした。音楽賞や紅白歌合戦での出来事も含め、昭和歌謡の魅力が一層広がった一年となりました。音楽シーンの変化を感じながら、これからも新しい音楽の時代が始まっていくことを期待させる、そんな年でした。

1962年(昭和37年)の名曲、発売リスト

以下に、1962年の代表的な演歌・歌謡曲をいくつか紹介します。

  • アイ・ジョージ 「哀愁のトランペット」
  • 飯田久彦 「ルイジアナ・ママ」「悲しき片思い」
  • 石原裕次郎 「赤いハンカチ」
  • 伊東ゆかり 「ロコモーション」
  • 植木等 「無責任一代男」「ハイそれまでョ」「これが男の生きる道」「ショボクレ人生」
  • 北島三郎 「なみだ船」
  • 北原謙二 「若いふたり」
  • 倉光薫(ロカビリー歌手)「クライ・クライ・クライ」
  • こまどり姉妹 「未練ごころ」
  • コレット・テンピア楽団『太陽はひとりぼっち』
  • 五月みどり 「一週間に十日来い」
  • ジェリー藤尾 「遠くへ行きたい」
  • 鈴木やすし 「ジェニ・ジェニ」
  • スリーファンキーズ 「アカパルコのお転婆娘」「涙の日記」
  • ダークダックス「山男の歌」
  • ダニー飯田とパラダイスキング、佐野修 「電話でキッス」
  • 田端義夫 「島育ち」
  • 中尾ミエ 「可愛いベイビー」
  • 仲宗根美樹 「ユキコの灯」
  • 倍賞千恵子 「下町の太陽」「忘れな草をあなたに」
  • 橋幸夫 「江梨子」「若いやつ」「中山七里」
  • 橋幸夫、吉永小百合 「いつでも夢を」
  • 畠山みどり 「恋は神代の昔から」
  • ハナ肇とクレイジーキャッツ 「五万節」
  • ザ・ピーナッツ 「ふりむかないで」「レモンのキッス」
  • 弘田三枝子 「すてきな16才」「ヴァケイション」「かっこいいツイスト」
  • 藤木孝 「ツイストNo.1」「ママのツイスト」「キッス・イン・ツイスト」
  • 藤田まこと 「てなもんや三度笠」
  • ペギー葉山 「琵琶湖周航の歌」
  • 美空ひばり 「ひばりの佐渡情話」
  • 三橋美智也 「星屑の町」
  • 守屋浩 「大学数え唄」
  • 森山加代子 「五匹の子豚とチャールストン」
  • 吉永小百合、和田弘とマヒナスターズ 「寒い朝」

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