1977年:社会変化と新たな希望の光
1977年は、日本社会が高度経済成長を終え、成熟した社会へと移行しつつある時期でした。この年は多岐にわたる出来事があり、それぞれが社会や文化に深い影響を与えました。
政治面では、ロッキード事件が引き続き大きな注目を集めました。丸紅ルートと全日空ルートの初公判が1月に行われ、この不正事件は日本国内の政治倫理を揺るがす象徴的な問題となりました。また、2月には日米漁業協定が調印され、200海里経済水域規定に基づく漁業管理の新しい枠組みが確立されました。この協定は、国際的な資源管理の必要性を反映しており、日本の漁業政策にも大きな転換をもたらしました。
社会面では、いくつかの衝撃的な事件が発生しました。1月に起きた青酸コーラ無差別殺人事件は、無差別殺人の恐怖を広げ、社会の安全に対する意識を高めるきっかけとなりました。また、2月には弘前大学教授夫人殺人事件の再審無罪判決が出され、冤罪問題への関心が高まりました。この判決は、司法制度の課題を浮き彫りにし、法改正や制度改善を求める声が強まりました。
一方で、文化や技術の面では新たな進展が見られました。フジテレビ系で『ドリフ大爆笑』が放送を開始し、視聴者の笑いを誘う人気番組として地位を確立しました。また、宝酒造が「宝焼酎 純」を発売するなど、新たな商品が市場に登場し、消費者文化を活気づけました。この年の流行としては、音楽やファッションの分野でポップカルチャーの影響が強まり、特に若者文化が大きな注目を集めました。
交通インフラの発展も進みました。3月には神戸市営地下鉄の初路線が開通し、都市部の交通利便性が向上しました。また、4月には東急新玉川線(現・田園都市線)が開業し、郊外と都心を結ぶ鉄道網の整備が進みました。これらのインフラの発展は、都市生活の質を向上させ、地域間のアクセスを大幅に改善しました。
スポーツの分野でも記憶に残る出来事がいくつかありました。全日本柔道選手権大会では、山下泰裕が19歳という史上最年少で初優勝を果たし、以後の日本柔道界を象徴する存在となりました。この快挙は、若い世代の力強さと日本の伝統スポーツの未来を感じさせるものでした。また、第49回選抜高等学校野球大会では箕島高校が優勝を果たし、高校野球ファンに感動を与えました。
1977年はまた、社会変化を象徴する制度改革も行われました。3月には男性が保母資格を取得できるようになり、保育分野におけるジェンダーの壁を崩す重要な一歩となりました。これにより、保育所における男性職員の活躍が可能となり、多様な視点を取り入れた保育が進められるようになりました。
文学や芸術の面でも注目すべき動きがありました。山梨県がミレーの名画「種まく人」などを購入し、翌年の美術館開館に向けた準備を進めました。このような文化的な取り組みは、地域住民の文化的豊かさを高めるとともに、地域の魅力を向上させる効果が期待されました。
1977年は、社会的な課題と文化的な発展が交錯する一年でした。政治の混乱や衝撃的な事件が多かった一方で、新たな技術や文化の進展が見られ、社会全体が変化の中で前進していることを感じさせる年でもありました。
1977年の昭和歌謡:昭和の名曲と事件が交錯した一年
1977年の日本の音楽シーンは、多くの記憶に残る出来事と名曲に彩られた年でした。この年は音楽業界にとって新しいトレンドが生まれると同時に、大衆文化にも強い影響を与える年となりました。
まず、キャンディーズの解散宣言が大きな話題を呼びました。7月17日、日比谷野外音楽堂でのライブ中に「普通の女の子に戻りたい」との言葉で突如解散を発表したこの瞬間は、当時のファンだけでなく日本中を驚かせました。キャンディーズの人気は1978年4月の正式解散まで続き、特に彼女たちの象徴的な曲である「やさしい悪魔」や「微笑がえし」は多くの人々の記憶に刻まれています。
また、矢沢永吉が日本武道館で単独公演を成功させたことも注目されました。ロックとカリスマ性を兼ね備えた彼のステージは、観客を魅了し、以降の日本のロックシーンに多大な影響を与えました。一方、海外ではエルヴィス・プレスリーが42歳の若さでこの世を去り、そのニュースは世界的に広がりました。日本の音楽シーンでもエルヴィスの影響を受けたアーティストが多く、その死は大きな衝撃を与えました。
12月31日に行われた第19回日本レコード大賞では、沢田研二の「勝手にしやがれ」が大賞を受賞しました。この楽曲は彼の個性的な歌唱とパフォーマンスによって大ヒットし、同年の音楽シーンを象徴する一曲となりました。また、最優秀歌唱賞には八代亜紀の「愛の終着駅」が選ばれ、その深い歌声が評価されました。一方で、最優秀新人賞は清水健太郎の「失恋レストラン」が受賞し、新たな才能の登場を印象付けました。
第28回NHK紅白歌合戦もまた、その年の音楽シーンを反映する重要なイベントとなりました。この年の紅白は大麻スキャンダルの影響で出演者の選定に慎重を要しながらも、ピンク・レディーが初出場し「ウォンテッド (指名手配)」を披露するなど、多くの視聴者を楽しませました。また、山口百恵の「イミテイション・ゴールド」や石川さゆりの「津軽海峡・冬景色」など、名曲が披露された紅白は、視聴者にとって年末の楽しみとなりました。
この年の音楽シーン全体を見ると、アイドルブームが本格化していた一方で、ロックや演歌といった異なるジャンルが共存し、多様性に満ちていたことが特徴です。キャンディーズやピンク・レディーのようなアイドルグループが若者を熱狂させる一方で、八代亜紀や北島三郎のような演歌歌手も幅広い世代から支持を得ていました。このようなジャンルの多様性は、1970年代後半の日本の音楽シーンを象徴するものでした。
さらに、この年に登場した楽曲やアーティストは、後の日本の音楽業界に大きな影響を与えました。沢田研二のようなスターの存在は、個性的なアーティストが台頭するきっかけを作り、矢沢永吉の日本武道館公演はライブ文化の発展に寄与しました。また、ピンク・レディーのダンスとキャッチーなメロディは、アイドルのパフォーマンススタイルに新しい基準を設けました。
1977年は音楽だけでなく、社会的背景や国際的な出来事とも深く結びついていました。エルヴィス・プレスリーやTレックスのマーク・ボランの死は、世界的な音楽シーンにも大きな影響を与え、日本国内でもその影響が感じられました。一方で、大麻スキャンダルは芸能界の闇を浮き彫りにし、音楽業界の健全性が問われる年でもありました。
総じて、1977年の日本の音楽シーンは、多くの名曲とともに語り継がれるべき重要な年でした。この年に生まれた楽曲やアーティストは、現在でも多くの人々に愛されており、日本の音楽文化の礎を築いたと言えるでしょう。
1977年(昭和52年)の名曲、ヒット曲リスト
以下に、1977年のオリコン総合シングル・チャート(邦楽・洋楽総合)を紹介します。
1位 ピンク・レディー:「渚のシンドバッド」
2位 森田公一とトップギャラン:「青春時代」
3位 ピンク・レディー:「ウォンテッド (指名手配)」
4位 沢田研二:「勝手にしやがれ」
5位 小林旭:「昔の名前で出ています」
6位 さだまさし:「雨やどり」
7位 ピンク・レディー:「カルメン’77」
8位 ピンク・レディー:「S・O・S」
9位 清水健太郎:「失恋レストラン」
10位 Hi-fi-set:「フィーリング」
11位 都はるみ:「北の宿から」
12位 清水健太郎:「帰らない/恋人よ」
13位 小柳ルミ子:「星の砂」
14位 ピンク・レディー:「ペッパー警部」
15位 狩人:「あずさ2号」
16位 石川さゆり:「津軽海峡・冬景色」
17位 ジグソー:「スカイ・ハイ」
18位 松崎しげる:「愛のメモリー」
19位 山口百恵:「赤い衝撃」
20位 山口百恵:「イミテイション・ゴールド」
21位 山口百恵:「夢先案内人」
22位 ダウン・タウン・ブギウギ・バンド:「サクセス/愛しのティナ」
23位 ジョー山中:「人間の証明のテーマ」
24位 沢田研二:「憎みきれないろくでなし」
25位 研ナオコ:「あばよ」
26位 石川さゆり:「能登半島」
27位 キャンディーズ:「やさしい悪魔」
28位 マイナー・チューニング・バンド:「ソウルこれっきりですか」
29位 郷ひろみ/郷ひろみ・樹木希林:「帰郷/お化けのロック」
30位 オリビア・ニュートン=ジョン:「カントリー・ロード」
31位 狩人:「コスモス街道」
32位 丸山圭子:「どうぞこのまま」
33位 野口五郎:「むさし野詩人」
34位 イルカ:「雨の物語」
35位 山口百恵:「秋桜」
36位 高田みづえ:「硝子坂」
37位 太田裕美:「しあわせ未満」
38位 岩崎宏美:「思秋期」
39位 キャンディーズ:「暑中お見舞い申し上げます」
40位 太田裕美:「九月の雨」
41位 イーグルス:「ホテル・カリフォルニア」
42位 内藤国雄:「おゆき」
43位 河島英五:「酒と泪と男と女」
44位 岩崎宏美:「熱帯魚」
45位 郷ひろみ:「悲しきメモリー」
46位 あおい輝彦:「Hi-Hi-Hi」
47位 野口五郎:「季節風」
48位 芹洋子:「四季の歌」
49位 オリビア・ニュートン=ジョン:「ジョリーン」
50位:山口百恵:「初恋草紙」
オリコン総合アルバム・チャート(邦楽・洋楽総合)
1位 Hi-fi-set:『ラブ・コレクション』
2位 イーグルス:『ホテル・カリフォルニア』
3位 小椋佳:『遠ざかる風景』
4位 荒井由実:『14番目の月 (The 14th Moon)』
5位 ベイ・シティ・ローラーズ:『ニュー・ベスト』
6位 ささきいさお:『宇宙戦艦ヤマト』
7位 さだまさし:『風見鶏』
8位 イルカ:『植物誌』
9位 因幡晃:『暮色』
10位 ベイ・シティ・ローラーズ:『青春に捧げるメロディー』
11位 ポール・モーリア・グランド・オーケストラ:『グレイテスト・ヒッツ24 PART I』
12位 オリビア・ニュートン=ジョン:『水のなかの妖精』
13位 さだまさし:『帰去来』
14位 因幡晃:『何か言い忘れたようで』
15位 ビートルズ:『ザ・ビートルズ・スーパー・ライヴ!』
16位 石川さゆり:『暖流』
17位 風:『WINDLESS BLUE』
18位 矢沢永吉:『ドアを開けろ』
19位 ダウン・タウン・ブギウギ・バンド:『傑作大全集』
20位 南こうせつ:『今こころのままに』
21位 ピンク・レディー:『ペッパー警部』
22位 荒井由実:『YUMING BRAND』
23位 吉田拓郎:『ぷらいべえと』
24位 クイーン:『華麗なるレース』
25位 オリビア・ニュートン=ジョン:『たそがれの恋』
26位 ピンク・レディー:『チャレンジ・コンサート』
27位 ベイ・シティ・ローラーズ:『恋のゲーム』
28位 Hi-fi-set:『The Diary』
29位 小椋佳:『渡良瀬逍遙』
30位 清水健太郎:『健太郎ファースト』
31位 森田公一とトップギャラン:『ヒット全曲集』
32位 グレープ:『グレープ・ライブ 三年坂』
33位 キッス:『地獄のロック・ファイアー』
34位 小椋佳:『彷徨』
35位 オリビア・ニュートン=ジョン:『きらめく光のように』
36位 因幡晃:『うすあかり』
37位 ABBA:『アライバル』
38位 小林旭:『ベスト20』
39位 かぐや姫:『かぐや姫フォーエバー』
40位 丸山圭子:『黄昏めもりぃ』
41位 ジャニス・イアン:『ジャニスの部屋』
42位 グラシェラ・スサーナ:『アドロ/サバの女王』
43位 太田裕美:『こけてぃっしゅ』
44位 小林旭:『哀愁』
45位 三浦友和と仲間たち:『赤頭巾ちゃん秘密だよ』
46位 太田裕美:『12ページの詩集』
47位 Hi-fi-set:『Fashionable Lover』
48位 大橋純子:『レインボー』
49位 ピンク・レディー:『サマー・ファイア’77』
50位 イルカ:『イルカライブ』
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