1983年(昭和58年)の演歌・歌謡曲

1983年:安定成長期に新たな可能性を模索する日本

1983年、日本は高度経済成長期から安定成長期へと移行する中、社会や文化、経済にさまざまな変化が見られた年でした。この年の日本を特徴づけるトピックは、国内外の政治動向や経済の進展、そして文化面での革新でした。それぞれの分野で起こった出来事が、時代の大きなうねりの一部として記憶されています。

政治の分野では、保守的な安定が引き続き重視される一方、スキャンダルや急な出来事が世間を揺るがしました。自由民主党の中川一郎が札幌のホテルで遺体で発見されたというニュースは、政治家の突然の死が国民に与える衝撃の大きさを改めて示しました。同時に、国際関係においては、中曽根康弘首相が韓国を訪問し、全斗煥大統領との会談を行ったことが注目されました。この訪問は、冷戦下での東アジアの安定を意識した外交の一環として位置づけられています。こうした一連の出来事が、国内外での日本の政治的立ち位置を再確認させる契機となりました。

社会的には、技術革新と生活の変化が深く絡み合っていました。例えば、1月には青函トンネルの先進導坑が貫通し、これが交通インフラの大きな進展を予感させる出来事として注目されました。また、4月に開業した東京ディズニーランドは、日本の娯楽文化に新しい風を吹き込む象徴的な出来事です。このテーマパークは、単なる娯楽施設にとどまらず、家族の絆を深める場としても大きな意義を持ちました。同じ月には、女子大生ブームの火付け役となった『オールナイトフジ』が放送開始されるなど、メディアを通じた新しいカルチャーが形成されていきました。

経済の分野では、産業の多角化が進む中、新しい製品や技術が次々と登場しました。自動車業界では、トヨタのFF「コロナ」や三菱自動車の「シャリオ」の発売が、市場に新たな選択肢を提供しました。さらに、カシオ計算機の「G-SHOCK」や日本コカ・コーラのスポーツ飲料「アクエリアス」の登場は、商品開発における創造性と実用性の両立を象徴しています。これらの新製品は、消費者のライフスタイルを豊かにし、生活の利便性を向上させる重要な役割を果たしました。

一方、芸能界や文化の分野では、新たなスターや作品が生まれ、話題を集めました。NHK朝の連続テレビ小説『おしん』が放送開始されたのは、視聴者に感動を与えるドラマとして語り継がれる出来事でした。また、松田聖子が出演中のコンサートで暴漢に襲われるという事件もあり、芸能界の光と影が浮き彫りになる年でもありました。音楽では、ビートたけしが司会を務めた『スーパージョッキー』が放送開始され、娯楽番組として多くのファンを獲得しました。

スポーツにおいては、青木功がハワイアン・オープンで日本人初のアメリカPGAツアー優勝を果たし、国内外で称賛を浴びました。この功績は、日本のゴルフ界の可能性を示すものであり、多くの若手選手に希望を与えました。また、池田高校が甲子園で夏春連覇を達成するという快挙もあり、スポーツの分野では国内外で日本の存在感が高まった年といえます。

1983年は、日本が新しい時代に向けた一歩を踏み出した年でした。政治や経済、文化、そして社会全体が、それぞれの分野で新たな可能性を模索しながら歩みを進めた年として、多くの人々の記憶に残っています。これらの出来事は、現在の日本社会の基盤を形成する上で、重要な役割を果たしたといえるでしょう。

1983年の昭和歌謡:アイドル旋風と実力派の競演が生んだ感動

1983年の日本の音楽シーンは、新旧が交錯しながらも多彩なジャンルが花開いた1年でした。この年は、中森明菜や松田聖子といったアイドルの活躍が目立つ一方で、細川たかしや森昌子といった実力派歌手たちの名曲が多くの人々の心をつかみました。また、尾崎豊のデビューが新しい時代の幕開けを告げる象徴的な出来事となり、日本の音楽界にとって忘れられない年となりました。

この年、特に注目を集めた楽曲の一つが中森明菜の「セカンド・ラブ」です。切ない恋心を描いたこの楽曲は、若者から圧倒的な支持を受け、彼女の地位を不動のものとしました。同じく、ラッツ&スターの「め組のひと」は、ユニークなリズムとキャッチーな歌詞で幅広い層に受け入れられました。一方で、日野美歌と佳山明生の「氷雨」は競作としてリリースされ、哀愁漂うメロディが多くのリスナーに愛される結果となりました。

12月31日に行われた第25回日本レコード大賞では、細川たかしの「矢切の渡し」が大賞を受賞しました。この楽曲は、船頭が情景豊かに描かれた歌詞と、細川たかしの卓越した歌唱力が相まって、幅広い層に支持される結果となりました。また、森昌子が歌う「越冬つばめ」が最優秀歌唱賞を受賞し、その力強い歌声が改めて評価されました。さらに、最優秀新人賞にはTHE GOOD-BYEの「きまぐれONE WAY BOY」が選ばれ、新しい時代の風を感じさせる一幕もありました。

1983年の紅白歌合戦も特筆すべきイベントでした。この年の司会には鈴木健二と黒柳徹子が起用され、前回の視聴率低下を挽回すべくさまざまな試みが行われました。番組では西城秀樹、野口五郎、郷ひろみの「新御三家」を序盤に配置し、終盤には松田聖子や田原俊彦といったトップアイドルを登場させるなど、計算された演出が印象的でした。また、サザンオールスターズのユニークなパフォーマンスも話題を呼び、紅白歌合戦は改めて日本の音楽シーンを代表する舞台であることを示しました。

さらに、この年にデビューした尾崎豊は、アルバム「十七歳の地図」で多くの若者の共感を呼びました。そのリアルで切実な歌詞は、日本の音楽界に新しい価値観をもたらし、後のアーティストたちにも大きな影響を与えました。

1983年の音楽シーンを振り返ると、アイドルと実力派が共存する多様性が見られました。それぞれのジャンルがリスナーに独自の価値を提供し、その結果、幅広い世代が音楽を楽しむことができたのです。この年の楽曲やアーティストたちが日本の音楽史に与えた影響は計り知れません。後に続く時代の基盤を築いた1983年は、まさに転換期であり、音楽の新しい可能性を広げた重要な1年でした。

1983年(昭和58年)の名曲、ヒット曲リスト

以下に、1983年のオリコン総合シングル・チャート(邦楽・洋楽総合)を紹介します。

1位 大川栄策:「さざんかの宿
2位 細川たかし:「矢切の渡し」
3位 わらべ:「めだかの兄妹」
4位 薬師丸ひろ子:「探偵物語/すこしだけやさしく」
5位 佳山明生:「氷雨
6位 杏里:「CAT’S EYE」
7位 松田聖子:「ガラスの林檎/SWEET MEMORIES」
8位 中森明菜:「セカンド・ラブ」
9位 アイリーン・キャラ:「フラッシュダンス」
10位 ラッツ&スター:「め組のひと」
11位 原田知世:「時をかける少女」
12位 ヒロシ&キーボー:「3年目の浮気」
13位 中森明菜:「1⁄2の神話」
14位 村下孝蔵:「初恋」
15位 日野美歌:「氷雨」
16位 松田聖子:「天国のキッス」
17位 中森明菜:「禁区」
18位 都はるみ岡千秋:「浪花恋しぐれ」
19位 中森明菜:「トワイライト -夕暮れ便り-」
20位 H2O:「想い出がいっぱい」
21位 葛城ユキ:「ボヘミアン」
22位 松田聖子:「秘密の花園」
23位 近藤真彦:「ミッドナイト・ステーション」
24位 中村雅俊:「恋人も濡れる街角」
25位 河合奈保子:「エスカレーション」
26位 上田正樹:「悲しい色やね」
27位 ローズマリー・バトラー:「汚れた英雄」
28位 イエロー・マジック・オーケストラ:「君に、胸キュン。(浮気なヴァカンス)」
29位 近藤真彦:「真夏の一秒」
30位 ALFEE:「メリーアン」
31位 柏原芳恵:「春なのに」
32位 風見慎吾:「僕笑っちゃいます」
33位 田原俊彦:「ピエロ」
34位 近藤真彦:「ためいきロ・カ・ビ・リー」
35位 田原俊彦:「さらば‥夏」
36位 岩崎宏美:「家路」
37位 サザンオールスターズ:「ボディ・スペシャルII (BODY SPECIAL)」
38位 稲垣潤一:「ドラマティック・レイン」
39位 杉山清貴&オメガトライブ:「SUMMER SUSPICION」
40位 早見優:「夏色のナンシー」
41位 森進一:「冬のリヴィエラ」
42位 epo:「う、ふ、ふ、ふ、」
43位 田原俊彦:「シャワーな気分」
44位 梅沢富美男:「夢芝居」
45位 高田みづえ:「そんなヒロシに騙されて」
46位 松田聖子:「瞳はダイアモンド/蒼いフォトグラフ」
47位 シブがき隊:「ZOKKON 命」
48位 大川栄策:「恋吹雪」
49位 長渕剛:「GOOD-BYE青春」
50位 原由子:「恋は、ご多忙申し上げます」

オリコン総合アルバム・チャート(邦楽・洋楽総合)

1位 サウンドトラック:『フラッシュダンス』
2位 フリオ・イグレシアス:『愛の瞬間』
3位 松田聖子:『ユートピア』
4位 中森明菜:『ファンタジー〈幻想曲〉』
5位 サザンオールスターズ:『綺麗』
6位 マイケル・ジャクソン:『スリラー』
7位 山下達郎:『MELODIES』
8位 中森明菜:『バリエーション〈変奏曲〉』
9位 松任谷由実:『REINCARNATION』
10位 中森明菜:『NEW AKINA エトランゼ』
11位 中島みゆき:『予感』
12位 松田聖子:『Candy』
13位 サザンオールスターズ:『バラッド ’77~’82』
14位 稲垣潤一:『Shylights』
15位 クリストファー・クロス:『アナザー・ページ』
16位 村下孝蔵:『初恋〜浅き夢みし〜』
17位 佐野元春:『No Damage (14のありふれたチャイム達)』
18位 ビリー・ジョエル:『イノセント・マン』
19位 稲垣潤一:『J.I.』
20位 カルチャー・クラブ:『ミステリー・ボーイ』
21位 ジャーニー:『フロンティアーズ』
22位 デヴィッド・ボウイ:『レッツ・ダンス』
23位 松山千春:『今、失われたものを求めて』
24位 上田正樹:『AFTER MIDNIGHT』
25位 サザンオールスターズ:『NUDE MAN』
26位 メン・アット・ワーク:『ワーク・ソングズ』
27位 松田聖子:『金色のリボン』
28位 イエロー・マジック・オーケストラ:『浮気なぼくら』
29位 葛城ユキ:『ランナー』
30位 サウンドトラック:『探偵物語』
31位 近藤真彦:『Rising』
32位 矢沢永吉:『YAZAWA It’s Just Rock’n Roll』
33位 さだまさし:『夢の轍』
34位 epo:『ビタミンE・P・O』
35位 サウンドトラック:『嵐を呼ぶ男』
36位 田原俊彦:『EVE only』
37位 シブがき隊:『夏・Zokkon』
38位 渡辺徹:『TALKING』
39位 フリオ・イグレシアス:『イザベラの瞳』
40位 田原俊彦:『波に消えたラブ・ストーリー』
41位 エイジア:『アルファ』
42位 あみん:『P.S. あなたへ…』
43位 ダリル・ホール&ジョン・オーツ:『H2O』
44位 矢沢永吉:『I am a Model』
45位 ALFEE:『ALFEE’S LAW』
46位 小泉今日子:『Breezing』
47位 中島みゆき:『ベストヒット全曲集』
48位 シブがき隊:『for ’83』
49位 小泉今日子:『詩色の季節』
50位 マリーン:『デジャ・ヴー』

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