北山たけし、「月うるる」で再始動――14年ぶりの“流行歌ライブ”で伝えた演歌の覚悟

演歌・歌謡曲の伝統を受け継ぐ月例イベント「大阪発流行歌ライブ」に、北山たけしさんが14年ぶりの出演を果たしました。2024年の「日本作詞大賞」で最優秀新人賞を受賞した新曲「月うるる」をはじめ、師匠・北島三郎さんが手がけた「津軽おとこ節」など計5曲を熱唱。満員の観客を前に、ベテランらしい安定感とともに、未来への一歩を感じさせるステージとなりました。

この日披露されたのは、曲だけではありません。自ら代表を務める音楽事務所「きたやま」から新人歌手のデビューを控え、その責任の重さ、そして新たな役割に挑む姿勢も語られました。北山さんにとっての「今」と「これから」が詰まった特別な一日。その模様をたっぷりとお届けします。

https://news.yahoo.co.jp/articles/31c6f0f08e104a65f64d91fdfabef28893cd7857
「月うるる」に想い乗せて。北山たけしが14年ぶり流行歌ライブ

14年ぶりの舞台で届けた「月うるる」

今回のライブで最も注目されたのは、やはり北山たけしさんの新曲「月うるる」です。2023年に発表されたこの作品は、作詞・横澤洋子さん、作曲・徳久広司さんという実力派による共作。横澤さんの詞が日本作詞大賞・最優秀新人賞を受賞したこともあり、すでに演歌ファンの間では注目の一曲となっていました。

「月うるる」は、情感豊かな歌詞とメロディーの美しさが際立つ作品です。取材で北山さんは、「レコーディング中、ブースの外で横澤先生が号泣していた」と明かし、その姿に心を打たれて「僕もウルッときました」と語りました。自身の歌が誰かの心に深く届いたという体験は、歌い手として忘れられないものになったようです。

ライブでは、その“うるる”とした感情がストレートに伝わってきました。声を張り上げることなく、丁寧に語りかけるように歌うその姿勢は、まさに今の北山たけしさんの心境を映し出しているようでした。

師匠譲りのユーモアと、にじむ責任感

初夏を思わせる陽気に合わせて、ミントグリーンのジャケットで登場した北山さん。「高くて襟まで手が回らなかった。でもTシャツはブランドです。あの○○!」と笑いを誘い、場を和ませるトークはさすがの一言。こうした“軽さ”の中にある絶妙な人間味は、付き人時代に舞台袖から師匠・北島三郎さんの姿を見て学んだものだそうです。

そして今回は、もうひとつの大きな発表もありました。自身の音楽事務所「きたやま」から、初めての新人歌手・堀内春菜さんのデビューが決定。堀内さんは北山さんと同じ九州出身で、これまで地元で地道に歌い続けてきたというシンガー。「責任を背負う分、自分の姿勢も正される」と語るその表情には、単なる“先輩”を超えた、育成者としての覚悟がにじんでいました。

デビュー前の堀内さんについて、北島さんにも相談したところ、「背負うものが増えると責任感も増すから、いいんじゃないか」と言葉をかけられたそうで、その一言が背中を押したと語っています。

北島イズムを受け継ぎ、新しい一歩へ

ライブの後半には、北島一門の大先輩・原田悠里さんも登場。「風雪ながれ旅」を女唄としてカバーし、まったく異なる表現で魅せた歌唱は、改めて“北島イズム”の多様性と奥行きを感じさせました。

北山さん自身もこの曲を即興で口ずさんでおり、「先に歌ってしまってすみません」と恐縮しながらも、原田さんとの共演を心から喜んでいた様子が印象的でした。CD即売会では、握手やサイン、写真撮影にも気さくに応じ、久々のライブ出演を心から楽しんでいることが伝わってきました。

今後は「月うるる」の息の長いヒットを目指して、歌い込んでいきたいと語る北山さん。派手さはなくても、じっくりと人の心に沁み込んでいくような作品に育てていきたいという想いが、言葉の端々に感じられました。

演歌ニュース記事 感想

ライブの様子を知って、何よりも印象に残ったのは「月うるる」への思いの強さでした。ただの新曲披露ではなく、作詞家との“想いの共有”がそこにあり、北山さん自身がその感情を受け止めて歌に乗せていたことが伝わってきました。誰かが涙を流して生まれた詞を、自分の歌で伝えていく。その誠実さが、演歌というジャンルの根っこにある“心を届ける力”だと思います。

また、堀内春菜さんのデビューに向けての真剣なまなざしにも、北山さんの変化を感じました。かつて“弟子”だった側から、いまは“育てる側”へ。責任を負いながらも、どこか楽しげに未来を語るその姿勢に、演歌の世界がしっかりと受け継がれていることを感じさせられました。

軽妙なトーク、心のこもった歌、そして舞台裏での覚悟。今回の出演は、北山たけしさんにとって単なる復帰ではなく、次の一歩を踏み出すきっかけとなる時間だったように思います。

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