春風がほんのりと頬をなでる四月、東京・世田谷区にて、長良グループ主催による恒例イベント「第二十二回 夜桜演歌まつり~熱唱 春の祭典スペシャル~」が開催されました。東京都内23区を23年かけてめぐるという壮大なプロジェクトは、今年で22回目。コロナ禍による中断を経て、待望の復活を遂げたこの演歌イベントは、まさに“演歌でつなぐ春の再会”とも呼べる一日となりました。
出演したのは、田川寿美さん、水森かおりさん、岩佐美咲さん、はやぶさ(ヒカルさん・ヤマトさん)、辰巳ゆうとさんといった長良グループの人気歌手たち。さらにスペシャルゲストとして、グッチ裕三さん、山川豊さんも登場。約900人のファンが詰めかけた会場では、それぞれの想いが花開くような、濃密で温かいステージが繰り広げられました。
この春にしか咲かない、心の花々が交差する一日。その舞台裏と熱唱の模様を、3つの視点から紐解いていきます。
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長良グループ主催「夜桜演歌まつり」が世田谷区で開催。田川寿美、水森かおりら全7組が出演。心に届けておきたい春の宴
23年かけて紡がれる「演歌の旅」の再始動
「夜桜演歌まつり」は、2000年に北区からスタートした“東京23区を23年かけて巡る”壮大な企画。単なる演歌イベントではなく、売上の一部を開催区に寄付するチャリティー活動としても知られています。コロナ禍によって一時中断されていましたが、今年、ついに3年ぶりの復活となりました。
開演前に行われた会見では、第一回から連続参加している田川寿美さんが、「出会いと別れの年月を経て、こうしてまた皆さんと春を迎えられたのは、本当にありがたい」と語りました。その言葉には、このイベントが単なる音楽の場を超え、出演者たちの人生そのものと重なる存在になっていることが滲み出ていました。
水森かおりさんも「23年という時間がいつの間にか目前に迫っていることに驚きました。今日はその大事な一歩です」と語り、節目への意識と、ステージに立つ意味の深さをにじませていました。
ステージに込められた、それぞれの“今”
本番のステージでは、それぞれのアーティストが過去と現在をつなぐように、丁寧に、そして情熱的に歌声を響かせました。
オープニングを飾ったのは辰巳ゆうとさん。デビュー以来、数々の舞台を経験してきた彼ですが、「満開の桜に負けないように」と意気込み、「迷宮のマリア」で堂々としたパフォーマンスを披露しました。若さと情熱にあふれた歌声が、早春の空気に鮮やかに溶け込んでいきます。
続くはやぶさの二人──ヒカルさんは、デビュー2か月で出演したというこのイベントの思い出を語り、ヤマトさんも「改めて出演できることのありがたみを感じています」と語りました。彼らのパフォーマンスには、年月を重ねてきた自信と感謝が滲み、観客の心をつかみます。
岩佐美咲さんは「またこのステージに立ててうれしい」と語りながら、元AKB48という異色の経歴を持つ彼女が、今や堂々たる演歌歌手として確固たる存在感を放つ様子が印象的でした。
心に届いた“再会”のメロディーと絆
今回のステージで最も胸を打った瞬間のひとつが、山川豊さんの登場でした。元長良プロダクション所属であり、事務所を離れてもこうして呼ばれることに、「感無量です」と短く語った言葉に、深い想いがにじみました。
山川さんの存在に、水森さんは「この『夜桜演歌まつり』は山川さんの『夜桜』から始まりました」と語り、リハーサルで二人で『夜桜』を歌った際の感動を振り返りました。「事務所を離れても心は一つ」というその言葉は、会場全体に静かに、そして強く響いたことでしょう。
トリを飾ったのは田川寿美さん。第一回からの皆勤賞である彼女が、このイベントに懸ける思いを乗せて歌う姿は、ただのステージを超えた“人生の軌跡”のようでした。言葉では言い表せないような時間の重みと、ステージへの愛情が観客にも静かに伝わっていたように感じます。
なお、当初出演予定だったささきいさおさんは病気療養中のため欠席となりましたが、その分、出演者全員が“仲間の分も歌う”というような気迫を見せたことが印象的でした。
演歌ニュース記事 感想
このイベントのレポートを読んでいて、何より心に残ったのは「つながり」という言葉でした。ただの音楽イベントではなく、出演者同士の絆、そして観客との長年の信頼関係があって初めて成立する空間だと思います。特に、水森さんが語った「心は一つ」という言葉は、どんな時代にも通じる普遍的な優しさがあって胸に沁みました。
個人的にグッときたのは、山川さんの登場です。一度離れた事務所のイベントに呼ばれるというのは、おそらく口で言うほど簡単なことではないでしょう。そのうえで、共演者たちが自然に迎え入れ、かつ観客も拍手で包むという、この空気感こそが「演歌」の持つ温かさだと思いました。
23区をめぐる旅も、ついに来年でゴール。もしかしたら「最後の春」を意識していた方もいたかもしれません。けれど、この日のステージには終わりの雰囲気は一切なく、むしろ次の春、さらにその先の希望を見せてくれたように感じました。
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