2025年3月、東京で行われた取材の場に、大月みやこさんが静かに現れました。年齢を重ねても変わらぬ気品を湛えたその姿は、デビュー60周年という節目を越えてなお、さらなる音楽の高みを目指しているように感じられます。
新曲のタイトルは『恋の終止符(ピリオド)』。それはまるで、人生の一章をそっと閉じるような切なさと、その奥にある決意を感じさせる一曲です。さらにカップリング曲『うす紅桜』もまた、彼女らしい情感のこもった演歌に仕上がっており、新旧2つの表現を携えて、大月さんは再びリスナーの心を揺さぶりにきました。
今回のインタビューでは、「声の表情」を通じて人の心を打つという、大月さんならではの歌唱へのこだわり、そして変化を恐れない姿勢が語られました。60年という年月を歩んできたからこそ語れる言葉の数々。この記事では、そのインタビューの魅力をたっぷりとご紹介していきます。
https://news.yahoo.co.jp/articles/2bfec67833b8a4d9441ab8b85d46628ede7e26ad
大月みやこ「〝声の表情〟で歌を表現したい」 恩師に言われた「聴いてくれる人の心に響く歌を」の教えを胸に歌い続ける【インタビュー①】
「恋の終止符」に込められた、切なさと背中を押す優しさ
新曲『恋の終止符』は、大月みやこさんのこれまでの楽曲と一線を画す内容です。歌の舞台は夕暮れの駅。旅立つ恋人に「私のことはいいの」と告げる女性の姿が描かれています。
この主人公は、ただ別れを受け入れるのではなく、相手の未来を思い、あえて身を引くという複雑な心情を抱いています。大月さんはこの女性を「切ないけれど、それを言わなければならない人」と表現します。そこには、悲しみだけでなく、相手を思う深い優しさが含まれています。
大月さんはこの曲について、「『こういう物語もいいね』と思ってもらえるような、今の自分の声で演じる主人公を描きたい」と語りました。これまでの“王道演歌”とは少し違う、“歌謡曲”としての側面が際立った楽曲でありながら、女心の機微を繊細に描くその手法は、まさに「大月ワールド」の進化形と呼ぶべき作品です。
「うす紅桜」に感じる、大月演歌の真骨頂
カップリングとして収録された『うす紅桜』は、三拍子のやさしいリズムにのせて、愛する人を静かに支える女性の心情を綴った一曲です。『女の港』『白い海峡』など、多くのヒット曲を生んできた大月さんにとって、この楽曲は“原点回帰”とも言えるような一面を持っています。
「この世界観に安心する人も多いはず」と語るように、大月さん自身が長年大切にしてきた「寄り添う歌」の精神がここに凝縮されています。特別なドラマがあるわけではありませんが、どこか懐かしく、心の奥にそっと寄り添ってくるような一曲です。
大月さんは「『うす紅桜』から入って、『恋の終止符』へと聴いてもらいたい」と話します。まずは馴染みやすい演歌の世界観から入ってもらい、そこから新たな表現へと自然に導く。この順番には、大月さんならではの“聴き手への配慮”が込められているようにも思えます。
恩師の教えと、60年の歩みが育んだ「声の表情」
大月みやこさんが大切にしている言葉に、「声の表情」というものがあります。顔は笑っていれば分かりやすい。でも、声でそれを表現するには、より繊細な感情のコントロールが必要です。言葉とメロディーのあいだにある“間”や“揺れ”を操りながら、その奥にある心を聴き手に届ける──それこそが、大月さんの目指す歌のかたちです。
彼女がデビューしたのは、東京五輪が初めて開催された1964年。実は当初、歌手になるつもりはなく、オーディションも「受かるわけがない」と思っていたそうです。しかし予想外の合格をきっかけに、人生の歯車は静かに、そして確実に動き始めました。
紅白歌合戦やレコード大賞といった華やかな舞台にも立ってきた大月さんですが、「目標は持たなかった」と語ります。代わりに胸に残っているのは、恩師に言われた「聴いてくれる人の心に響く歌を」という一言。それ以来、彼女は“自分のため”ではなく、“誰かの心に届く”歌を目指して、日々声を磨いてきました。
「歌は年をとらない」と言い切る大月さん。その言葉には、歌と共に歩んできた人生への深い信頼と、これからも変わらず続けていくという覚悟が込められているように感じます。
演歌ニュース記事 感想
この記事を読みながら、一番心に残ったのは「声の表情」という言葉でした。演歌や歌謡曲というジャンルにおいて、声の持つ感情の温度がどれほど大切なのか、あらためて考えさせられます。
また、目標を立てずに60年歌い続けてきたという姿勢には驚きました。普通なら「紅白に出たい」「賞を取りたい」と思ってしまいそうなところを、あくまで“今日が昨日より良ければ”と穏やかに話す姿に、強さと深さの両方を感じます。
新曲『恋の終止符』は、これまでの大月さんを知っている人にとっては新鮮であり、初めて聴く人にとっても切なさと優しさが心に響く曲だと思います。『うす紅桜』とあわせて聴くことで、大月さんの歌の幅と奥行きがより鮮明に伝わってくるはずです。
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