1936年(昭和11年)の演歌・歌謡曲

1936年:クーデターとモダン文化が刻んだ日本の分岐点

1936年の日本は、政治的激動と文化的躍動が交錯する一年でした。昭和11年にあたるこの年、国内外での出来事が日本社会に大きな影響を与えました。

まず、政治の面では、2月26日に発生した「二・二六事件」が特筆されます。この事件は、若手陸軍将校たちが政府要人を襲撃し、首相官邸や警視庁を占拠したクーデター未遂事件でした。この反乱により、内閣は総辞職し、広田弘毅内閣が成立しました。事件後、軍部の影響力が増し、政治体制は一層軍国主義的な方向へと進んでいきました。

経済面では、世界恐慌の影響を受けつつも、日本は他の先進国に比べて比較的早く回復を遂げました。特に、重工業や軍需産業の成長が著しく、経済の軍事化が進行しました。また、満州での産業開発や資源確保も進められ、経済活動は国家の軍事政策と密接に結びついていきました。

社会的には、都市化の進展とともに、労働者や学生による社会運動が活発化しました。特に、天皇機関説を支持した美濃部達吉が右翼に襲撃される事件が発生し、言論の自由や学問の独立性が脅かされる状況となりました。また、方面委員制度(現在の民生委員制度)の法制度化が行われ、地域社会における福祉活動の基盤が整備されました。

文化の面では、ジャズやダンスなどの西洋文化が都市部を中心に流行し、モダンなライフスタイルが広がりました。また、漫画「江戸ッ子健ちゃん」の連載開始や、初のカラーニュース映画の公開など、大衆文化の発展が見られました。スポーツでは、プロ野球の公式戦が始まり、巨人軍が初勝利を挙げるなど、野球人気が高まりました。さらに、ベルリンオリンピックでの日本選手の活躍や、東京が次回オリンピックの開催地に選ばれるなど、国際的なスポーツイベントへの関心も高まりました。

国際的には、11月にドイツとの間で日独防共協定が締結され、反共主義を掲げる国際的な枠組みが形成されました。また、スペイン内戦の勃発や、ソ連での大粛清の開始など、世界的にも不安定な情勢が続いていました。日本はこれらの動向に影響を受けつつ、自国の外交政策を展開していきました。

このように、1936年の日本は、内政・外交・経済・文化の各分野で大きな変化と動きが見られた年でした。政治的には軍部の台頭が顕著となり、経済的には軍需産業の拡大が進み、社会的には都市化とともに新たな課題が浮上しました。文化面では西洋文化の受容と大衆文化の発展が進み、国際的には新たな枠組みへの参加が見られました。これらの動きは、後の日本の進路に大きな影響を与えることとなりました。

1936年:名曲「東京ラプソディ」と昭和音楽の夜明け

1936年(昭和11年)の日本の音楽シーンは、社会の変化や国際情勢の影響を受けながら、多様なジャンルが交錯し、独自の発展を遂げた年でした。特に流行歌やジャズ、クラシックといった分野での動きが顕著であり、後の日本音楽の礎を築く重要な時期となりました。

この年、藤山一郎が歌った「東京ラプソディ」が大ヒットし、都会的で洗練されたメロディが多くの人々の心をつかみました。また、淡谷のり子の「おしゃれ娘」も人気を博し、彼女の独特な歌声が注目されました。

一方で、霧島昇の「赤城しぐれ」や美ち奴の「あゝそれなのに」など、哀愁を帯びた楽曲も多くの支持を集めました。これらの曲は、当時の社会情勢や人々の心情を反映しており、歌詞やメロディに深い感情が込められています。

さらに、この年は二葉あき子がデビューし、彼女の「ビロードの月」や「月に踊る」といった楽曲が話題となりました。彼女の透明感のある歌声は、多くのファンを魅了し、後の歌謡界に大きな影響を与えました。

また、1936年6月1日にはNHKで「国民歌謡」の放送が開始され、全国の人々が同じ楽曲を共有する機会が増えました。この取り組みは、音楽を通じて国民の一体感を高めることを目的としており、実際に多くの人々がこれらの楽曲を口ずさむようになりました。

このように、1936年の日本の音楽シーンは、多様なジャンルが共存し、それぞれが独自の発展を遂げる活気に満ちたものでした。流行歌の隆盛、クラシック音楽の深化、そして新たなメディアの登場などが相まって、日本の音楽文化は大きな転換期を迎えていたのです。

1936年(昭和11年)の名曲、発売リスト

以下に、1936年の代表的な演歌・歌謡曲をいくつか紹介します。

  • コロムビア・ジャズ・バンド「草津ジャズ」
  • ディック・ミネ「愛の小窓」
  • リキー宮川「夢見る心」
  • 榎本健一「エノケンの月光価千金」
  • 奥田良三「夜明けの歌」
  • 岡晴夫「港シャンソン」
  • 音丸「米山三里」
  • 三門順子「追分月夜」
  • 中野忠晴「東京見物」「大阪タイガースの歌(1961年に「阪神タイガースの歌」に改題。通称・「六甲おろし」)」
  • 林伊佐緒「上海航路」
  • 児玉好雄「吾等の空軍」
  • 小唄勝太郎「満洲ぐらし」
  • 小野巡、大宮小夜子「つわもの節」
  • 松平晃「人妻椿」「花言葉の唄」
  • 杉狂児、美ち奴「うちの女房にゃ髭がある」
  • 淡谷のり子「おしゃれ娘」
  • 渡辺はま子「忘れちゃいやョ」
  • 藤山一郎「男の純情」「回想譜」「東京ラプソディ」「東京娘」
  • 楠木繁夫「女の階級」
  • 二葉あき子「ビロードの月」「月に踊る」
  • 美ち奴「あゝそれなのに」
  • 霧島昇「思い出の江ノ島」「赤城しぐれ」
  • 尾崎宗吉「初夏小品」
  • 童謡「うれしいひなまつり」
  • 県民歌「群馬県の歌」「佐賀県民歌」

コメント

タイトルとURLをコピーしました